- 〔横浜〕2011年12月13日(火) みなとみらいホール 大ホール
千年のときを経て、いまなお世界で愛読されている「源氏物語」。
この世界最古の大長編恋愛物語をテーマにした芸術祭『冨田勲・源氏物語 芸術祭2011』を当財団の主催で開催しました。
源氏物語と冨田勲、この出会いは戦時中にさかのぼります。冨田さんは小学校の教科書に載っていたこの物語を読み、独特の雰囲気に魅了されたといいます。
そして、この出会いがきっかけで、「源氏物語」の世界を音で表現しようと思い立ち、1998年に完成させたのが「源氏物語幻想交響絵巻」という、フル・オーケストラのための大作です。そして、2011年にはその「完全版」をCDに収録されています。
いっぽう、ホリ・ヒロシさんは、若い頃から源氏物語をテーマにした人形舞台を手がけておられ、冨田さんのCDジャケットにホリさんの人形を載せたいというアプローチがきっかけで冨田さんとホリさんとの付き合いが始まっています。
やがて二人は、2001年比叡山延暦寺でオーケストラと人形舞の舞台を実現することになります。
そして、今回、「源氏物語幻想交響絵巻」という大作を、オルガニストの橘ゆりさんによるミュージック・アトリエAT-900の演奏と、ホリさんの人形舞とのコラボレーションで、まったく新しい表現領域への挑戦として実現させました。
その舞台は横浜を代表するみなとみらいホールの大ホール。
橘さんは、この大作を冨田さんから譲り受けたフル・オーケストラ用のスコアから独自にミュージック・アトリエ用にアレンジ、本番では決してオーケストラの代用ではなく、最初からあたかもミュージック・アトリエのために書かれた楽曲かと錯覚するほどの完璧な演奏を披露されました。
そしてホリさんの人形の一挙一動がアトリエの音に導かれるように舞台を流れ舞い、まさに生きているかのような人形の瞳に惹きつけられた観客は、しばし現実を忘れ、たっぷりと源氏の雅な世界を堪能しました。
今回の公演の成功に、終演後冨田さんは「ホリさんの人形舞の素晴らしさはもちろんのこと、今回の演奏が素晴らしかったのは、橘さんが私のオーケストラ用のスコアをそのまま演奏するのではなく、ミュージック・アトリエのためにアレンジして演奏されたところ。そのことが、オーケストラの代用品ではなく、ミュージック・アトリエの特性を大いに活かしたアレンジ、仕上がりにつながりました。オーケストラとはまた異なる、ひとつの世界が出来上がっていたわけです。私の期待に見事に応えてくれました。」
と満面の笑みを浮かべながら語っていただきました。
電子オルガンのイメージを大きく飛躍させ、後進の音楽家に素晴らしい見本と新たな提案を示された今回の公演は、開催後も長く語り継がれていくことでしょう。
そして後半は、「りんぼう先生」としても著名な作家、林望さんによる講演会。林さんご自身も現代語訳版の『謹訳源氏物語』を執筆中ということで、分かりやすく、親しみの沸くその解説に大きな拍手が送られていました。

いっさいの打ち込みを使用せず、すべての楽曲をリアルタイムで演奏。
だからこそ伝わってくる多くのものを感じとることができました。

舞台に仕掛けられた階段から登場した人形の美しさとその動きの流麗さ、
神秘さに観客は大いに魅了されました。

今回のハイライトとも言える、六条御息所の生霊が葵の上を襲うシーンは、
即興的な演奏表現と音響効果の工夫により、
迫りくる生霊とその怨念による恐怖感が観客一人ひとりに伝わり、迫力満点となりました。

主人公の「光源氏」は、貴族の雅やかな日々の象徴。
